王様の瞳 〜Nikon S2〜
「お母さん、僕のローライ35 ドコへ行った
んでせうね。」
余は言わずと知れた王様じゃ。日本の小説は
写せても読めない。
それはともかく、来るハズのローライ35が
何処へやら。で、こんなヤツが主人を訪ねて
来てビックリだぞ。
なーんと、日本が誇るNikon。
コレは量産型のS2じゃの。
主人のマニアックなお仲間から見せて頂いて
いたおかげで、直ぐ分かったワイ。
1954年12月の発売、ワシの生まれる10年前じ
ゃ。
ファインダー機の新設計機種。
この頃はまだ、レンジファインダー機がカメラ
の主力じゃったが、同年前半にLeicaがM3と言
う画期的なレンジファインダーカメラを発表し
たこともあり、発売月を遅らせて改良を加えて
満を持して出した。と言う話は有名。
M3と違い、ファインダー内のブライトフレーム
は50mm 専用じゃが、明るく良く見える。
他にはフィルムの一回巻き上げレバーやリワイ
ンドノブがクランクになっておって、ココはM3
より使い易いのでは無いかな?
ただ、M3のファインダーは機構からして別格
じゃがな。
して、この御仁、適度に使われておったらしい
から、調子はすこぶる良さそうじゃ。
ダイヤルが黒いのは後期型なんだそうじゃが、
余の様にシルバーのまんま。と見かけの好み
は分かれそうじゃ。
が、しかし、なんか複雑な心境なのは、この
S2や後継のS3,SPなどの頃にはNikonはレフ機
を完成させとってな、1959年の言わずと知れた
Nikon F と言うレフ機の登場で、レンジファイ
ンダー機はそれまでの主役の座から降りること
となった訳じゃ。
当然、ワシの出生にも大きな影響があったろう
て。
そう言う意味では敬意を持って接しなくては
ならん。
主人は余に慣れてしまったせいか、フィルムの
装填が楽過ぎる。と感激しておった。
いつの時代の人間じゃ?
余から見れば、デジタルも持っているクセに
当時の人間そのまま見てるようで滑稽過ぎる。
多分、明日はなんやかんや理由付けて散歩に
行きたそうなムードじゃな。
ま、田舎故、三密は無いにせよ、自粛は自粛な
んじゃがな。
続く
By おうさま